栄養士時代は、100名ほどの園児が在籍する保育園で、給食やおやつを提供していました。
毎年3・4月になると、保育園の先生たちも卒園と入園の準備にてんてこ舞い。
保育園や幼稚園に入園を控えているご家庭でも、通園のためのカバンや備品など、あれこれと準備にいそがしいと思います。
でも意外に忘れたれていたりする給食の準備。
今日は給食室からみた、保育園の給食あるあるを実体験を交えてご紹介します。
食物アレルギーの症状が見られる園児は事前に検査を!
4月に一番あわただしいクラスは、年少さんのクラス。
一人が泣き出すとクラスの子どもたちがいっせいに泣き出すので、保育士さんたちもひと騒動です。
同時に、給食室も臨戦体制。
離乳食が始まったばかりの赤ちゃんも多く、離乳食は初期・中期・後期・完了期、と個別対応でした。
そしてこの時期に入園してくる園児の1割未満が何らかのアレルギー症状を持っていて、こちらも自分のいた保育園では個別対応でした。
アレルゲンの含まれる食品(調味料なども)は一切使用しない、また食器や調理器具もアレルギー食専用として分けて使用していました。
(※上記は施設により対応が異なりますのでご注意ください)
食物アレルギーとは?
食物アレルギーとは、特定の食べものに含まれるアレルギー原因物質(アレルゲン)に免疫機能が過剰反応してしまい、皮膚・呼吸器・消化器あるいは全身に生じる症状のことをいいます。
そのほとんどは食物に含まれるタンパク質が原因とされます。
アレルゲンは多岐にわたりますが、保育園では卵、乳製品が多く、そのほか小麦、ピーナッツ、大豆製品、そば、ゴマ、甲殻類(エビ・カニ)など。
詳しくは厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」
入園準備にやっておくべきこと!
医療機関での食物アレルギーの検査
食事後にアレルギー症状が出たことのあるお子さんのいるご家庭では、入園前に医療機関で食物アレルギーの検査を受けています。
入園して給食を提供する前に保育士さん主導のもと、親御さんと栄養士と面談して、診断書を参照しながら、園児のアレルギー症状や食べられるもの・食べられないものなど細かく相談する時間が設けられることがあります。
ただ、まれに症状があるにも関わらずお子さんの検査をすませていなくて給食が提供できないということも。
4月はクラスの担任の保育士も入れ替えがあったり、短期間だけ臨時の先生が入ったり。給食室でも新入園児たちの給食内容の把握などあわただしい時期。
だからこそ親御さんが早めに検査をすませて施設側に連絡・相談をしておいた方が、保育士さん達と給食室スタッフとの連携もとりやすくなります。
また、ご家庭では普段から食べ慣れている食品・食材に偏りがちですが、給食ではお子さんにとって初めて食べる食材があったりします。
提供した牛乳を飲んだ園児が皮膚のカユミを訴え、親御さんに確認したら牛乳を飲ませたことがなく、後日検査したら乳製品アレルギーだったと分かった稀なケースも聞いたことがあります。
心配な方は保育園側の献立メニューを事前にチェックして「うちの子はまだ〇〇食べさせたことないんですが」と施設側に相談したり、アレルギー検査など済ませておいた方が無難だと思います。
(※地域によって施設の対応は異なりますので、施設側にご確認ください。)
余談ですが、給食室のちょっとした体験談。
自分のいた保育園では複合的にアレルゲンをもつ子もいました。
年中だったA君は卵、乳製品、豚肉・・
つまり、ハンバーグや卵焼き、ドーナツやホットケーキなど数々の定番メニューやおやつが・・子どもが喜ぶメニューなのに食べられないものばかり。
アレルギー対応とはいえ公立の施設ではみんなと同じ給食費なので予算も、人手も限られていることが多いのが現状です。
親御さんと施設側の意向もあって、アレルゲンを含む献立メニューでは完全に見た目も味も違う代替食。
「どうせみんなより美味しくない給食なんだ」といつも給食の時間にふてくされているA君を笑顔にしたい!との思いで、みんなと同じ給食の見た目に近づけるように給食室のおばちゃん、おねえさんたちは頑張りました。
ハンバーグの献立の日は、鶏ひき肉と豆腐で、乳製品の入っていない食パンをすり下ろしたパン粉、卵の代わりに山芋などをツナギにして・・
ドーナツは乳製品未使用の粉で豆乳を使用して専用の油で揚げて・・
年長クラスになると食欲旺盛な子が増えて、おかずのおかわりが必須になってきます。
一般食のおかわりと別にA君優先おかわりを提供したところ、他の園児たちから「自分の給食よりウマい!ズルい!」と言われたらしく、その日を境にA君が満面の笑みで給食を取りに来てくれるようになりました。
ちょっと感動的でした。
食物アレルギーのある子をたくさん見てきましたが、1年〜3年経過するとアレルゲンだった卵や乳製品が段階的に食べられるようになることがほとんどでした。
食物アレルギーだからといって、あまり神経質や悲観的にならず、子どもの興味・成長に合わせて色んな食べものに触れることが食育として大切だと思います。
本記事は必ずしも各読者の状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて、医師その他の専門家に相談するなどご自身の責任と判断により適切に対応くださいますようお願いいたします。[:]